健康診断の尿酸値 基準値と高値の意味 専門家解説
健康診断の結果で「尿酸値」の項目に異常が指摘され、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。尿酸値は、痛風の原因としてよく知られていますが、それ以外にも様々な健康リスクと関連しています。
この項目では、健康診断における尿酸値が何を意味するのか、基準値や高値の場合の詳しい解説、そして専門家としてどのような視点を持つべきかについてお伝えします。
尿酸値とは何ですか?
尿酸とは、体内でプリン体という物質が分解される際にできる老廃物の一つです。プリン体は細胞の核に含まれる成分であり、食品にも多く含まれています。通常、尿酸は血液中に溶け込み、腎臓でろ過されて尿として体外へ排泄されます。
尿酸は少量であれば体内で抗酸化作用を持つなど、全く無意味な物質ではありませんが、血中の尿酸濃度が高くなりすぎると問題が生じます。
尿酸値の基準値はどのくらいですか?
一般的な健康診断における血清尿酸値の基準値は、男女ともに 7.0 mg/dL以下 とされることが多いです。この数値を超えた状態を高尿酸血症と呼びます。
ただし、基準値は検査機関によって多少異なる場合がありますので、お手元の健康診断結果に記載されている基準値をまずご確認ください。
尿酸値は、食事内容や飲酒、運動、ストレス、脱水など、様々な要因によって一時的に変動することがあります。そのため、一度基準値を超えたからといってすぐに病気と確定するわけではありませんが、継続的な高値は注意が必要です。
尿酸値が高値(高尿酸血症)は何を意味しますか?
血清尿酸値が継続的に7.0 mg/dLを超える高尿酸血症の状態は、様々な健康リスクを高めることが知られています。主なリスクとして、以下のものが挙げられます。
- 痛風(つうふう): 血液中の尿酸濃度が高い状態が続くと、尿酸が結晶化して関節に沈着しやすくなります。この尿酸結晶に対して体が炎症反応を起こすことで、激しい痛みを伴う痛風発作(痛風性関節炎)が起こります。特に足の親指の付け根に起こりやすいですが、他の関節にも起こり得ます。
- 腎機能障害: 尿酸結晶は腎臓にも沈着し、腎臓の働きを徐々に低下させる可能性があります。また、高尿酸血症自体が腎臓への負担を増やし、慢性腎臓病のリスクを高めることも指摘されています。
- 尿路結石: 尿中の尿酸濃度が高いと、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に尿酸結石ができやすくなります。結石が移動する際に激しい痛みを伴うことがあります。
- メタボリックシンドロームや心血管疾患との関連: 高尿酸血症は、高血圧、脂質異常症、糖尿病といったメタボリックシンドロームの他の構成要素と合併しやすいことがわかっています。これらの病態が複合することで、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクがさらに高まります。高尿酸血症そのものが、これらの疾患の発症に関与している可能性も研究されています。
高尿酸血症の恐ろしさは、痛風発作が起こるまで自覚症状がないことが多い点です。健康診断で指摘された場合、たとえ症状がなくても放置せず、次のステップを検討することが重要です。
なぜ尿酸値は高くなるのですか?
尿酸値が高くなる主な原因は、以下のいずれか、あるいは複数が組み合わさることによります。
- 尿酸の生成が過剰になる:
- プリン体を多く含む食品(肉のレバー、魚の干物、エビ、ビールなど)の過剰摂取。
- 果糖(清涼飲料水や果物ジュースに多い)の過剰摂取も、尿酸生成を促進します。
- アルコールの過剰摂取(特にビール)。アルコール自体が尿酸生成を増やし、排泄を妨げます。
- 激しい運動。
- 細胞の生まれ変わりが活発な病気(白血病など)。
- 尿酸の排泄が低下する:
- 腎臓の機能低下。
- 体質や遺伝。
- 脱水状態。
- 特定の薬剤(利尿薬など)の使用。
- 肥満。
- 高血圧、糖尿病などの他の病気。
特に、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加など、生活習慣の変化が高尿酸血症の大きな要因となっています。
健康診断で尿酸値の高値を指摘されたら、どうすれば良いですか?
健康診断で尿酸値が基準値を超えていた場合、まずはお手元の結果を確認し、その後の対応について医療機関に相談することをお勧めします。
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医療機関への相談:
- かかりつけ医がいる場合はそこに相談するのが最もスムーズです。いない場合は、内科や専門外来(痛風・高尿酸血症外来など)を受診すると良いでしょう。
- 受診時には、健康診断の結果、現在服用している薬、これまでの病歴、自覚症状の有無、普段の食生活や飲酒習慣、運動習慣などを具体的に伝えられるように準備しておくと、診断や治療方針の決定に役立ちます。
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再検査・精密検査:
- 一度の検査での高値は、一時的な変動の可能性もあります。医師の判断により、日を改めて再検査を行い、尿酸値が持続的に高いかどうかを確認することがあります。
- 高尿酸血症と診断された場合や、痛風発作の既往がある場合、腎機能障害や尿路結石が疑われる場合などは、さらに詳しい検査が行われることがあります。具体的には、血液検査(腎機能、肝機能、脂質、血糖値など)、尿検査(尿酸排泄量、蛋白、潜血など)、腹部超音波検査(腎臓、尿路、結石の有無など)などです。これらの検査によって、高尿酸血症の原因や合併症の有無、重症度を評価します。
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診断と治療方針:
- 検査結果に基づいて、医師が高尿酸血症の診断を行います。
- 治療方針は、尿酸値の高さ、痛風発作の有無、腎機能障害や他の合併症の有無、年齢、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。
- 治療の基本は、生活習慣の改善です。食事療法、飲酒制限、適度な運動、水分摂取の推奨などが行われます。
- 生活習慣の改善だけでは尿酸値が十分に下がらない場合や、痛風発作の既往がある場合、腎機能障害などの合併症がある場合、尿酸値が非常に高い場合などには、尿酸値を下げるための薬物療法が検討されます。
日常生活でできる尿酸値対策
高尿酸血症の予防や改善のために、日常生活で以下の点に注意しましょう。
- 食事: プリン体を多く含む食品の摂りすぎに注意します。肉のレバー、魚卵、干物、エビ、イワシの丸干しなどは控えめに。肉や魚そのものにもプリン体は含まれるため、食べ過ぎに注意が必要です。果糖を多く含む清涼飲料水や加工食品も避けるようにしましょう。野菜や海藻類は積極的に摂りましょう。
- アルコール: 特にビールはプリン体を多く含むため、控えめにします。他のアルコールも、尿酸の排泄を妨げるため、種類に関わらず適量を心がけましょう。可能であれば休肝日を設けることが望ましいです。
- 水分摂取: 尿量を増やし、尿酸の排泄を促すために、十分に水分(水やお茶)を摂取しましょう。ただし、糖分の多いジュースは避けましょう。
- 運動: 適度な有酸素運動(ウォーキングなど)は、肥満解消にもつながり尿酸値の管理に有効です。ただし、無酸素運動のような激しい運動はかえって尿酸値を一時的に上げる可能性があるため、避けるか医師に相談しましょう。
- 体重管理: 肥満は高尿酸血症と関連が深いため、適正体重を維持することが重要です。
- ストレス管理: ストレスも尿酸値を変動させる要因の一つとされています。
これらの対策は、高尿酸血症だけでなく、メタボリックシンドロームや心血管疾患の予防にもつながります。
まとめ
健康診断で尿酸値の高値を指摘された場合、それは将来の痛風や腎機能障害、心血管疾患などのリスクを示すサインである可能性があります。
たとえ自覚症状がなくても、放置せずに専門の医療機関に相談し、詳しい検査を受けて原因やリスクを正しく評価してもらうことが大切です。医師と相談しながら、生活習慣の見直しや、必要に応じて適切な治療を行うことで、尿酸値をコントロールし、関連する病気の発症や進行を防ぐことが可能です。
尿酸値は適切に管理できる数値です。健康診断の結果を自身の健康と向き合う良い機会と捉え、専門家のアドバイスを参考に、より健康的な生活を目指しましょう。