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健康診断オプション 腫瘍マーカーの正しい理解 専門家解説

Tags: 腫瘍マーカー, 健康診断, 血液検査, 高値, 再検査

健康診断における腫瘍マーカーとは?不安を感じやすい項目を専門家が解説

健康診断の項目の中には、任意で追加できるオプション検査がいくつかあります。その一つに「腫瘍マーカー」検査があります。腫瘍マーカーと聞くと、「がん」と直結してしまい、高値だった場合に強い不安を感じる方も少なくないでしょう。

しかし、腫瘍マーカー検査の結果は、その数値だけでがんの有無を確定診断するものではありません。専門家として、腫瘍マーカー検査の正しい理解と、結果に対する適切な向き合い方について解説いたします。

腫瘍マーカーとはどのような物質か

腫瘍マーカーとは、がん細胞が存在する際に、健康な時には見られないか、あるいは少量しか見られない物質が、がん細胞から産生されたり、がんの存在に反応して体内で増えたりするものの総称です。血液や尿、体液などで測定されます。

様々な種類の腫瘍マーカーがあり、それぞれ特定の臓器のがんとの関連性が示唆されています。例えば、CEAは消化器系や肺、乳腺など、CA19-9は膵臓や胆道系、PSAは前立腺がんとの関連が知られています。

健康診断における腫瘍マーカー検査の意義と限界

健康診断における腫瘍マーカー検査は、多くの場合、特定の症状がない段階でのスクリーニング(ふるい分け)を目的とした補助的な検査として位置づけられます。

陽性(高値)であれば、何らかの異常がある可能性を示唆しますが、これはあくまで「可能性」であり、確定診断ではありません。腫瘍マーカー検査には、その特性上、いくつかの限界があることを理解しておくことが非常に重要です。

  1. 特異性が低い場合がある(偽陽性): がん以外の良性疾患(炎症、感染症など)や、喫煙、加齢、飲酒、妊娠などによっても腫瘍マーカーの数値が高くなることがあります。また、個人差や測定誤差によっても変動することがあります。そのため、腫瘍マーカーが高値であっても、実際にはがんではない「偽陽性」となるケースが少なくありません。
  2. 感度が低い場合がある(偽陰性): 逆に、早期のがんや、腫瘍の種類によっては、腫瘍マーカーが基準値内に収まることがあります。がんが存在していても、腫瘍マーカーが異常値を示さない「偽陰性」のケースも存在します。したがって、腫瘍マーカーが基準値内であっても、がんを完全に否定することはできません。
  3. 進行度との関連性: 腫瘍マーカーは、進行したがんや再発したがんでは高値を示すことが多いですが、早期の段階では数値が上昇しないことが一般的です。健康診断で早期がんを発見する手段としては、万能ではありません。

これらの理由から、腫瘍マーカー検査は単独で行うよりも、他の検査(画像検査、内視鏡検査など)や医師の診察、問診と組み合わせて、総合的に判断されるべき検査です。

腫瘍マーカーが高値だった場合に次に取るべき行動

健康診断で腫瘍マーカーが高値という結果が出た場合、まず大切なのは、過度に不安になりすぎないことです。前述のように、高値であっても多くの場合、がん以外の原因が考えられます。

結果を受け取ったら、必ず医療機関を受診し、医師に相談してください。受診時には、健康診断の結果表を持参することが重要です。

医療機関では、医師が以下の点を総合的に評価します。

これらの詳細な検査と医師の専門的な判断によって、腫瘍マーカー高値の原因が、がんによるものなのか、それとも良性疾患や生理的な変動によるものなのかを見極めていきます。

専門家からのメッセージ

健康診断で腫瘍マーカー検査を受けることは、自身の健康状態を知るための一つの有効な手段です。しかし、その結果、特に高値が出た場合には、「がんかもしれない」という強い不安に襲われることがあるかと思います。

重要なのは、腫瘍マーカーはあくまで診断の「手がかり」の一つであり、単独でがんを確定するものではないという事実を理解することです。高値が出たとしても、すぐにパニックにならず、冷静に専門医に相談し、適切な追加検査や診察を受けることが、最も賢明な対応と言えます。

また、腫瘍マーカーが基準値内であっても、気になる症状がある場合は、腫瘍マーカーの結果に関わらず医療機関を受診することが大切です。

ご自身の健康を守るために、健康診断の結果と正しく向き合い、必要に応じて専門家である医師の意見を求めることを心がけてください。