健康診断 尿検査のタンパク・潜血 異常値の意味 専門家解説
健康診断における尿検査は、腎臓や尿路の異常、さらには全身の病気のサインを早期に発見するための重要な検査項目です。特に「尿タンパク」や「尿潜血」の項目で異常を指摘された場合、多くの方が不安を感じられることと思います。ここでは、これらの異常値が何を意味するのか、専門家の立場から詳しく解説いたします。
Q1: 尿検査の「タンパク」「潜血」とは?何を見ているのですか?
A1: 尿検査で検出される「タンパク」と「潜血」は、腎臓や尿路系の健康状態を把握するための重要な指標です。
- 尿タンパク: 通常、健康な状態であれば、血液中のタンパク質(主にアルブミン)は腎臓の糸球体というフィルターで濾過されず、尿中にはほとんど排泄されません。しかし、腎臓の機能に障害が生じると、このフィルター機能が損なわれ、タンパク質が尿中に漏れ出すようになります。尿タンパク検査は、この尿中のタンパク質の量を調べ、腎臓の障害の可能性を示唆するものです。
- 尿潜血: 尿中に血液(赤血球)が混じっているかどうかを調べます。肉眼では分からないわずかな血液でも検出できるため、「潜血」と呼ばれます。尿中に赤血球が混じる原因は、腎臓や尿管、膀胱、尿道といった尿が作られ排出される経路のどこかに異常がある可能性を示唆します。結石や炎症、腫瘍など、様々な原因が考えられます。
Q2: 尿検査で「タンパク陽性(±, +, ++など)」と言われたら?何を意味するのですか?
A2: 尿タンパクが陽性(基準値を超える値)と判定された場合、いくつかの可能性が考えられます。
最も注意が必要なのは、腎臓病の初期サインである可能性です。慢性腎臓病(CKD)など、腎臓の機能が徐々に低下していく病気では、初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断の尿タンパク異常で初めて発見されることが少なくありません。
一方で、病気以外の原因で一時的に尿タンパクが増加する「生理的タンパク尿」というものもあります。これは、激しい運動の後、発熱時、あるいは起立性タンパク尿(特に若い痩せ型の人が、立っている間にだけタンパクが出る)など、特定の状況下で起こるもので、通常は心配ありません。
健康診断での尿検査は一度きりの時点での評価であり、その時の体調によって変動することもあります。精密検査では、早朝尿や24時間蓄尿でのタンパク量測定、血液検査(腎機能関連項目)、画像検査(超音波など)、必要に応じて腎生検などが検討され、タンパク尿が病的なものか、原因は何かが詳しく調べられます。
Q3: 尿検査で「潜血陽性(±, +, ++など)」と言われたら?何を意味するのですか?
A3: 尿潜血が陽性と判定された場合も、腎臓や尿路系のどこかに異常がある可能性が考えられます。
考えられる原因としては、
- 尿路結石: 尿管や膀胱にできた結石が粘膜を傷つけ、出血することがあります。
- 膀胱炎や腎盂腎炎などの炎症: 尿路の感染症により炎症が起き、出血を伴うことがあります。
- 腎臓の病気: 糸球体腎炎など、腎臓自体からの出血が原因となることがあります。
- 尿路の腫瘍: 膀胱がんや腎臓がんなど、腫瘍からの出血である可能性も否定できません。
- その他: 激しい運動、生理中やその前後、風邪などの感染症、特定の薬剤なども原因となることがあります。
尿潜血も、生理的な変動や検査方法による偽陽性(実際には血液が混じっていないのに陽性と判定されること)の可能性がないわけではありません。しかし、特に高リスク因子(喫煙、特定の既往歴など)がある場合や、潜血の程度が強い場合、持続する場合などは、泌尿器科や腎臓内科での精密検査が強く推奨されます。
Q4: タンパクと潜血の両方が陽性の場合は?
A4: 尿タンパクと尿潜血の両方が陽性の場合、腎臓自体に原因がある可能性が高まります。特に、糸球体腎炎のような腎臓の病気では、タンパク質が漏れ出すだけでなく、糸球体からの出血を伴うことが少なくありません。
両方の項目で異常が指摘された場合は、腎臓病の可能性をより慎重に評価する必要があり、速やかに専門医(腎臓内科医)の診察を受けることが重要です。
Q5: これらの異常値が出た場合、次にどうすれば良いですか?
A5: 健康診断で尿タンパクや尿潜血の異常を指摘された場合、まずは落ち着いてください。これらの異常値が必ずしも重篤な病気を意味するわけではありませんが、その異常が一時的なものか、あるいは病的なものかを判断するために、精密検査を受けることが推奨されます。
- 医療機関への相談: 健康診断の結果を持参し、かかりつけ医や、可能であれば腎臓内科や泌尿器科を受診してください。特にタンパクと潜血の両方が陽性の場合、あるいは値が高い場合は、腎臓内科医の診察が望ましいでしょう。
- 精密検査: 受診した医療機関で、再度の尿検査、血液検査(腎機能、炎症マーカーなど)、腹部超音波検査などが行われます。これらの検査で、異常の原因を特定したり、腎臓や尿路の状態を詳しく調べたりします。必要に応じて、より専門的な検査(CT、MRI、腎生検など)が検討されることもあります。
- 原因の特定と治療: 精密検査の結果、異常の原因が特定されれば、その原因に応じた適切な治療や経過観察が開始されます。原因によっては、治療が必要ない場合や、生活習慣の改善だけで様子を見る場合もあります。
Q6: 日常生活で注意すべきことはありますか?
A6: 精密検査で原因が判明するまでは、自己判断で過度な心配をしたり、インターネット上の不確かな情報に振り回されたりしないことが大切です。医療機関の指示に従い、原因が特定されるのを待ちましょう。
一般的な健康管理として、以下のような点に注意することは無駄ではありません。
- 十分な水分摂取を心がける(ただし、医師から水分制限の指示がある場合はそれに従う)。
- バランスの取れた食事を心がける。特に、塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけるため注意が必要です。
- 適度な運動を習慣にする。
- 禁煙を検討する。
- 必要に応じて、血糖値や血圧の管理に努める(高血糖や高血圧は腎臓病の大きなリスク因子です)。
ただし、これらの一般的な注意点は、精密検査で判明した個別の原因に対する直接的な治療や対策とは異なる場合があります。必ず医師の診断に基づいたアドバイスを優先してください。
まとめ
健康診断で尿タンパクや尿潜血の異常を指摘されたことは、ご自身の体に関心を持ち、より詳しく調べるための良い機会と捉えましょう。これらの異常値は、腎臓や尿路の病気のサインである可能性もあれば、一時的なものである可能性もあります。自己判断せず、必ず医療機関を受診して精密検査を受け、専門医の正確な診断と適切なアドバイスを受けることが最も重要です。早期に適切な対応をすることで、将来の健康リスクを減らすことにつながります。