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健康診断のLDH 基準値と高値の意味 専門家解説

Tags: LDH, 健康診断, 血液検査, 高値, 精密検査

健康診断のLDH(乳酸脱水素酵素)とは

健康診断の血液検査項目の一つにLDH(乳酸脱水素酵素:Lactate Dehydrogenase)があります。LDHは、体内の様々な臓器や組織の細胞内に存在する酵素で、ブドウ糖をエネルギーに変換する代謝経路の一部を担っています。

LDHは、細胞が破壊されたり傷ついたりすると、細胞内から血液中に流れ出す性質があります。そのため、血液中のLDH値を測定することで、体内のどこかに細胞の障害や炎症が起きている可能性を知る手がかりとなります。健康診断では、全身の健康状態を把握するための一つの指標として測定されることがあります。

LDHの基準値について

LDHの基準値は、検査を受ける医療機関や検査方法によって多少異なりますが、一般的には120~240 IU/L程度を基準範囲とすることが多いです。健康診断の結果には、基準範囲と共に、ご自身の測定値が記載されていますのでご確認ください。

ただし、基準値はあくまで健康な方の約95%が含まれる範囲を示したものであり、基準値をわずかに超えているからといって、必ずしも病気があるとは限りません。しかし、基準値を大きく超えている場合や、他の検査項目にも異常が見られる場合は、精密検査が必要となる可能性があります。

LDH高値が示す意味

血液中のLDH値が高い場合、体内のどこかで細胞が障害を受け、LDHが血液中に漏れ出していることが考えられます。LDHが高値を示す原因は非常に多岐にわたります。これはLDHが特定の臓器だけでなく、全身の様々な細胞に存在するためです。

LDH高値から考えられる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

このように、LDH高値は多様な原因で起こり得るため、LDH値単独で特定の病気を診断することはできません。他の検査項目(AST, ALT, γ-GTP, CRP, 白血球数など)の結果や、自覚症状、既往歴などを総合的に評価することが重要です。

LDH高値を指摘されたら

健康診断でLDH高値を指摘された場合、「要再検査」や「要精密検査」といった判定がつくことがあります。これは、より詳しく調べる必要があることを意味します。

まずは、健康診断を受けた医療機関や、かかりつけ医に相談することをお勧めします。医師は、あなたのLDH値の具体的な数値、他の検査項目の結果、自覚症状(発熱、だるさ、黄疸、貧血症状、体の痛みなど)、既往歴、服用している薬、最近の体調や生活習慣(激しい運動をしたかなど)などを詳しく確認します。

そして、LDH高値の原因を探るために、以下のようなステップが考えられます。

  1. 再検査: まずは採血してLDH値を再度測定し、一過性の上昇ではないか、数値が悪化していないかなどを確認します。
  2. 追加の血液検査: 原因が疑われる臓器に関連する検査項目(例:肝機能検査、腎機能検査、血液学的検査、特定の酵素の測定など)を詳しく調べます。LDHにはアイソザイム(同位酵素)という種類があり、その比率を調べることで、どの臓器からのLDH上昇かを推定できる場合もあります。
  3. 画像検査: 疑われる病気に応じて、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などが実施されることがあります。
  4. その他の検査: 必要に応じて、心電図、内視鏡検査などが検討されることもあります。

これらの検査を通じて、LDH高値の原因となっている病気や状態の特定を進めます。原因が特定された場合は、適切な治療や経過観察が開始されます。

日常生活でできること

LDH高値の原因が特定できない場合や、軽度の上昇の場合は、定期的な経過観察となることがあります。原因が特定された場合は、その疾患に対する治療や対策が最も重要です。

LDH値そのものを直接下げる特効薬や特定の生活習慣はありませんが、LDH高値の背景に潜む様々な疾患のリスクを下げるためには、一般的な健康管理が重要です。

まとめ

健康診断でLDH高値を指摘された場合、様々な可能性が考えられます。LDH値は全身の細胞障害の指標として有用ですが、それ単独で特定の病気を診断することはできません。

大切なのは、結果を放置せず、必ず医療機関を受診して専門医に相談することです。医師は、あなたの健康状態を総合的に評価し、必要に応じて更なる検査や適切なアドバイスを行います。過度に不安になることなく、専門家の guidance に従って、ご自身の健康と向き合うための一歩を踏み出してください。