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肝機能検査 AST ALT γ-GTP 異常値が示す総合的な意味と原因探求 専門家解説

Tags: 健康診断, 肝機能検査, AST, ALT, γ-GTP, 異常値, 再検査

健康診断の肝機能検査、異常値が出たらどうすれば良いか?

健康診断の結果を受け取り、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能に関する項目に異常値があった場合、多くの方が不安を感じられることと存じます。特に、単一の項目だけでなく複数の項目が基準値から外れていた場合、その意味合いや、どのような病気が隠れている可能性があるのか、詳しく知りたいと思われるのではないでしょうか。

ここでは、専門家の視点から、これらの肝機能検査の主要な項目が異常値を示した場合の総合的な読み解き方、考えられる原因、そして次に取るべき行動について解説いたします。健康診断の結果を適切に理解し、ご自身の健康管理にお役立ていただくための一助となれば幸いです。

肝機能検査の主要項目が示す基本的な意味

健康診断でよく測定される肝機能関連の項目には、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPのほか、ALP(アルカリホスファターゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)、総ビリルビンなどがあります。これらの項目は、それぞれ肝臓や胆道の異なる機能や状態を反映しています。

複数の肝機能項目異常が示す総合的な意味合い

単一の項目異常だけでなく、複数の項目が同時に異常を示す場合や、特定のパターンの異常は、原因疾患を絞り込む上で非常に重要な情報となります。専門医は、これらの項目の組み合わせや数値の程度を総合的に評価して、異常の原因を推測します。

いくつかの典型的なパターンとその示唆する意味合いを以下に示します。

もちろん、これらのパターンはあくまで一般的な傾向であり、個々の患者さんの状態によって解釈は異なります。数値の「軽度な異常」から「著しい高値」まで、その程度も診断において重要な要素となります。

異常値が出た場合の次のステップ:原因探求のプロセス

健康診断で肝機能検査の異常を指摘された場合、特に複数の項目が異常値を示している、あるいは数値の程度が大きい場合は、「要再検査」や「要精密検査」の判定となることが一般的です。これは、異常値の原因を特定し、適切な対応を行うために不可欠なステップです。

精密検査では、以下のような検査が検討されます。

  1. 詳細な問診と診察: 飲酒習慣、内服薬やサプリメントの使用歴、過去の病歴(肝炎ウイルスの感染歴など)、家族歴、自覚症状(倦怠感、食欲不振、黄疸など)について詳しくお伺いします。
  2. 血液検査: 健康診断で行った項目に加え、肝炎ウイルスマーカー(B型肝炎、C型肝炎など)、自己抗体(自己免疫性肝炎など)、脂質異常、血糖値、貧血の有無などを調べることがあります。
  3. 画像検査: 腹部超音波検査は、脂肪肝の有無、肝臓の形態異常、胆石や胆管の拡張などを評価するために広く行われます。必要に応じて、CT検査やMRI検査が行われることもあります。
  4. 肝生検: 必要に応じて、肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる肝生検が行われることもあります。これは、肝臓の炎症や線維化の程度、病理組織学的な特徴を詳細に把握するために最も確実な検査法ですが、侵襲性があるため適応は慎重に判断されます。

これらの検査を総合的に行うことで、脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎、胆道疾患など、異常の原因となっている病気を特定していきます。

医療機関に相談する際のポイント

健康診断の結果を持って医療機関を受診される際は、以下の点に留意されるとスムーズです。

日常生活でできること

肝機能異常の原因が特定された場合、その原因に応じた専門的な治療が必要となります。一方、精密検査で明らかな重篤な疾患が見つからなかった場合や、脂肪肝などの生活習慣病に関連する異常の場合には、日常生活での改善が非常に重要です。

これらの一般的な対策は、原因に関わらず肝臓の負担を軽減することにつながる可能性がありますが、必ず医療機関での診断に基づいた指導を受けてください。自己判断で特定の食事療法やサプリメントに頼ることは避けましょう。

まとめ

健康診断の肝機能検査で異常値が見つかることは、肝臓や胆道系に何らかの問題が生じているサインである可能性があります。特に複数の項目異常や数値の程度が大きい場合は、より詳細な検査によって原因を特定することが重要です。

不安を感じることは自然なことですが、異常を指摘されたからといって必ずしも重篤な病気であるとは限りません。しかし、放置せずに専門医の診断を受け、原因に応じた適切な管理や治療を開始することが、将来の健康を守る上で非常に大切です。健康診断の結果を前向きに捉え、ご自身の体と向き合う良い機会としていただければ幸いです。