健康診断 白血球分類異常 その意味と再検査の専門家解説
健康診断でわかる白血球分類とは? なぜ重要なのか
健康診断の血液検査では、体の状態を把握するために様々な項目が測定されます。その中でも「白血球」は、体内に侵入した細菌やウイルスなどから身を守る免疫機能において非常に重要な役割を担っています。
白血球にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる働きをしています。通常の健康診断で行われる「白血球分類」は、これらの白血球がどのような割合で存在するかを調べる検査です。主な白血球の種類には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球があります。これらの分類ごとの数を詳細に見ることで、単に白血球総数が多い、少ないといった情報だけではわからない、体の状態や異常の手がかりを得ることができます。
白血球分類の結果に異常が見られる場合、単なる一過性の変動であることもありますが、体内のどこかで炎症が起きている、感染症にかかっている、アレルギー反応が生じている、あるいは稀に血液疾患などが隠れている可能性も考えられます。そのため、白血球分類の異常値は、より詳細な検査や医療機関での相談が必要となる場合があります。
各白血球分類項目の意味と異常値が示す可能性
ここでは、白血球分類の主な項目について、それぞれの役割と、基準値から外れた場合に考えられる一般的な原因について解説します。基準値は検査機関によって多少異なる場合がありますが、ここでは一般的な目安を示します。
好中球 (Neutrophil)
- 役割: 細菌や真菌(カビ)などの病原体を貪食(取り込んで分解する)して排除する、急性炎症の中心的な役割を担う白血球です。
- 高値が示す可能性: 細菌感染症、炎症性疾患(関節リウマチなど)、組織の破壊(心筋梗塞など)、ストレス、喫煙、ステロイド薬の使用などが考えられます。急性炎症が起きている際によく増加します。
- 低値が示す可能性: ウイルス感染症(インフルエンザなど)、特定の細菌感染症(結核など)、薬剤の影響(抗がん剤など)、骨髄の機能低下、自己免疫疾患などが考えられます。感染に対する抵抗力が低下する可能性があります。
リンパ球 (Lymphocyte)
- 役割: ウイルス感染した細胞を攻撃したり(T細胞)、抗体を作って病原体を攻撃したり(B細胞)、がん細胞などを攻撃したりする(NK細胞)など、主にウイルス感染や慢性炎症、免疫反応に関わる白血球です。
- 高値が示す可能性: ウイルス感染症(風疹、おたふく風邪、伝染性単核球症など)、慢性炎症性疾患、特定の血液疾患(慢性リンパ性白血病など)などが考えられます。
- 低値が示す可能性: 免疫不全状態(HIV感染症など)、ステロイド薬の使用、放射線治療、特定の薬剤の影響、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、骨髄の機能低下などが考えられます。
単球 (Monocyte)
- 役割: 体内を循環した後、組織に入り込みマクロファージとなり、死んだ細胞や異物を貪食したり、免疫反応の司令塔としてリンパ球に情報を伝えたりする白血球です。主に慢性炎症や異物の処理に関わります。
- 高値が示す可能性: 慢性炎症性疾患(結核、梅毒、サルコイドーシスなど)、特定のウイルス感染症、骨髄の異常などが考えられます。
- 低値が示す可能性: 一般的に臨床的な意義は低いことが多いですが、特定の薬剤や骨髄の異常で低値となることもあります。
好酸球 (Eosinophil)
- 役割: アレルギー反応や寄生虫感染に対する防御に関わる白血球です。
- 高値が示す可能性: アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など)、寄生虫感染症、特定の皮膚疾患、薬剤アレルギー、稀に特定の血液疾患などが考えられます。
- 低値が示す可能性: 急性感染症、ステロイド薬の使用などで一時的に低値となることがありますが、臨床的な意義は低いことが多いです。
好塩基球 (Basophil)
- 役割: アレルギー反応や炎症に関わる白血球です。ヒスタミンなどの物質を放出して血管の透過性を高めたりします。数が最も少ない白血球です。
- 高値が示す可能性: アレルギー疾患、慢性骨髄性白血病などの特定の血液疾患、甲状腺機能低下症などが考えられます。
- 低値が示す可能性: 特に臨床的な意義は低いとされています。
白血球分類の異常値を指摘されたら:再検査と医療機関での相談
健康診断で白血球分類に異常値が見られた場合、「要再検査」や「要精密検査」といった判定がつくことがあります。これは、その数値だけで病気と断定するのではなく、より詳しく調べる必要があることを意味します。
- 一時的な変動の可能性: 白血球の数は、ストレス、睡眠不足、軽い体調不良、運動などによっても一時的に変動することがあります。健康診断の際に偶発的に異常値が出た可能性も否定できません。
- 再検査の目的: 再検査では、日を改めて改めて血液検査を行い、数値が持続的な異常か、一時的な変動かを確認します。多くの場合、再検査で数値が正常範囲に戻ることもあります。
- 精密検査の目的: 再検査でも異常値が続く場合や、他の検査項目にも異常がある場合、あるいは数値の変動が著しい場合などは、より詳細な「精密検査」が推奨されます。精密検査では、単なる白血球分類だけでなく、白血球を作る骨髄の状態を調べる骨髄検査や、フローサイトメトリーといったより詳しい細胞の分析、遺伝子検査などが行われることがあります。
異常値を指摘された際に最も大切なことは、自己判断せずに医療機関に相談することです。健康診断の結果を持参し、医師に相談することで、個々の状況に応じた適切なアドバイスや次のステップについての説明を受けることができます。医師は、白血球分類の数値だけでなく、他の検査結果、問診で得られる自覚症状や既往歴、生活習慣などを総合的に判断し、再検査や精密検査の必要性を判断します。
専門家からのアドバイス
健康診断の白血球分類で異常を指摘されると、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、数値の異常が直ちに重篤な病気を意味するわけではありません。まずは落ち着いて、結果をよく確認し、指摘された内容について理解を深めることが第一歩です。
白血球分類の異常は、体の免疫システムが何らかのサインを発している可能性があります。そのサインを見逃さず、専門家の意見を聞くことが、ご自身の健康を守る上で重要です。再検査や精密検査が必要と言われた場合は、指示に従って早めに医療機関を受診しましょう。専門医による詳細な検査と診断により、異常の原因が特定され、必要に応じて適切な対応を行うことができます。
日常生活においては、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、禁煙、過度な飲酒を控えるなど、一般的な健康管理を続けることが大切です。これらの基本的な健康習慣は、免疫機能を含む体の様々な機能を良好に保つために不可欠です。
ご自身の健康状態について疑問や不安があれば、遠慮なく医師に相談してください。専門家は、皆さまの健康をサポートするための情報と知識を提供し、安心して次のステップに進めるようお手伝いいたします。