健康診断でわかる白血球数異常 その意味と再検査のポイント 専門家解説
健康診断で白血球数の異常を指摘されたら?専門家が解説するその意味と次のステップ
健康診断の結果で、白血球数の項目に基準値からの逸脱が指摘され、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。白血球は私たちの体を様々な脅威から守る重要な役割を担っています。その数が多い、あるいは少ないという結果は、一体何を意味するのでしょうか。
このページでは、健康診断で白血球数の異常を指摘された際に知っておくべきことについて、健康診断分野の専門家が詳しく解説します。数値が示す可能性や、次に取るべき行動について、信頼できる情報を提供することで、読者の皆様の疑問や不安の解消を目指します。
白血球とは何か、その役割を理解する
まず、白血球とは私たちの血液中に含まれる細胞の一種であり、免疫システムの主役として機能しています。体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体、あるいは体内で発生したがん細胞などを攻撃・排除する役割を持っています。白血球にはいくつかの種類があり、それぞれが異なる働きを担っています(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球など)。健康診断で行われる白血球数の測定は、これらの白血球の総数を調べているのが一般的です。
白血球数は、体の状態に応じて常に変動しており、感染や炎症が起きている際には増加したり、特定の病状や薬剤の影響で減少したりすることがあります。したがって、健康診断で白血球数の基準値からの逸脱が見られた場合、様々な原因が考えられます。
健康診断における白血球数の基準値
健康診断での白血球数の基準値は、一般的に血液1マイクロリットルあたり約4,000個から9,000個程度とされています。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、検査を行う施設や測定方法によって基準値の範囲は多少異なる場合があります。ご自身の健康診断結果に記載されている基準値をご確認ください。
基準値よりも白血球数が多い状態を「白血球増多(はっけっきゅうぞうた)」、少ない状態を「白血球減少(はっけっきゅうげんしょう)」と呼びます。
白血球数が多い(白血球増多)場合に考えられる原因
白血球数が増加している場合、体内で何らかの防御反応や炎症が起きている可能性が考えられます。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 感染症: 細菌やウイルスなどによる感染は、白血球、特に好中球を増やして病原体と戦おうとする体の正常な反応です。風邪やインフルエンザのような軽度な感染症でも白血球数は増加します。
- 炎症: 体のどこかに炎症が起きている場合も、白血球数が増加します。関節炎や腸炎、手術後の状態など、様々な炎症性疾患が原因となります。
- 喫煙: 喫煙習慣のある方は、非喫煙者に比べて白血球数が高めになる傾向があります。これは、タバコの煙に含まれる成分が体にとって刺激となり、軽い炎症を引き起こすためと考えられています。
- ストレスや運動: 精神的なストレスや激しい運動の後にも、一時的に白血球数が増加することがあります。
- 薬剤の影響: ステロイド薬など、一部の薬剤の影響で白血球数が増加することが知られています。
- 血液疾患: ごくまれなケースですが、白血病などの血液細胞のがんによって白血球が異常に増殖している可能性もゼロではありません。ただし、健康診断での軽度な増加が直ちにこうした重篤な疾患を示すわけではありません。
白血球数が少ない(白血球減少)場合に考えられる原因
白血球数が減少している場合、免疫力が低下している、あるいは骨髄での白血球の産生がうまくいっていないなどの可能性が考えられます。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- ウイルス感染: ウイルス感染症の中には、一時的に白血球数を減少させるものがあります(例:インフルエンザ、風疹、エイズなど)。
- 薬剤の影響: 一部の抗生物質や鎮痛薬、抗がん剤など、特定の薬剤が骨髄の働きを抑制し、白血球数を減少させることがあります。
- 自己免疫疾患: 関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患では、自己の白血球を攻撃してしまうことにより白血球数が減少することがあります。
- 造血機能の異常: 骨髄の機能が低下している場合、白血球を十分に作れなくなります(例:再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など)。
- 脾機能亢進症: 脾臓が過剰に働き、白血球を破壊してしまう状態です。
- 栄養不足: ビタミンB12や葉酸などの栄養素が不足すると、白血球の産生に影響が出ることがあります。
健康診断で白血球数の異常を指摘されたらどう考えるべきか
健康診断で白血球数の基準値からの逸脱が見られても、すぐに重篤な病気と結びつけて過度に心配する必要はありません。白血球数は、その時の体の状態(疲労、軽い風邪、ストレスなど)によって一時的に変動することが多いからです。
重要なのは、その異常がどの程度のものか、他の検査項目(赤血球数、血小板数、CRP値などの炎症マーカー)に異常がないか、発熱や体のだるさなどの自覚症状があるか、といった点を総合的に判断することです。
再検査や精密検査が必要な場合
健康診断の結果を受け、医師が再検査や精密検査を勧めるのは、以下のようなケースが考えられます。
- 異常値の程度が大きい: 基準値から大きく逸脱している場合。
- 他の血液検査項目にも異常がある: 白血球数だけでなく、赤血球や血小板など、他の血液細胞の数にも異常が見られる場合。
- 炎症反応を示す数値(CRPなど)も高い/低い場合。
- 明らかな原因(例:進行中の感染症)が見当たらない場合。
- 発熱やだるさなど、何らかの自覚症状がある場合。
精密検査では、白血球の種類ごとの割合を詳しく調べる「白血球分画」や、必要に応じて骨髄の細胞を調べる「骨髄検査」などが行われることがあります。これらの検査によって、白血球数の異常の原因をより詳細に特定することが可能になります。
再検査や精密検査を勧められた場合は、必ず指示に従い、医療機関を受診してください。専門家である医師が、検査結果やこれまでの病歴、現在の症状などを総合的に判断し、適切な診断と治療方針を決定します。
日常生活でできること
健康診断で白血球数の異常を指摘されても、自己判断で過度な食事制限やサプリメント摂取などを行うことは避けましょう。まずは落ち着いて、医師の診断と指示を仰ぐことが最も重要です。
もし喫煙習慣が原因と考えられる場合は禁煙を検討したり、ストレスや疲労が原因と考えられる場合は十分な休息やストレス管理を心がけたりすることは、全体の健康にとって良い影響をもたらすでしょう。しかし、これらの対策はあくまで補助的なものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
まとめ
健康診断における白血球数の異常は、感染や炎症、生活習慣、薬剤の影響など、多様な原因によって引き起こされます。多くは一時的な変動や軽度な異常ですが、中には精密検査が必要となるケースも存在します。
ご自身の健康診断結果に白血球数の異常が記載されていた場合は、過度に心配しすぎず、まずは医療機関に相談することをお勧めします。医師は検査結果全体と臨床症状を照らし合わせ、白血球数の異常が持つ意味を正しく評価し、必要に応じて再検査や精密検査、適切な治療へとつなげてくれます。専門家の知見に基づいた適切な対応こそが、皆様の健康を守る上で最も確実な道と言えるでしょう。
本記事が、健康診断の結果に対する皆様の理解を深め、不必要な不安を軽減するための一助となれば幸いです。