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健康診断の赤血球数・MCV・MCH・MCHC 基準値と意味 専門家解説

Tags: 健康診断, 血液検査, 赤血球, 貧血, 異常値

健康診断で見られる赤血球数、MCV、MCH、MCHCとは?異常値が示す意味

健康診断の血液検査項目には、様々な体の状態を知るための指標が含まれています。その中でも、貧血や多血症などの血液の異常を早期に発見するために重要なのが、赤血球に関する項目です。特に、赤血球数と、それに加えて測定されるMCV、MCH、MCHCといった「赤血球指数」は、異常があった場合にその原因や種類を推測するための重要な手がかりとなります。

これらの項目について、健康診断で異常値を指摘された際に、「これは何を意味するのだろうか」「何か病気が隠れているのだろうか」と疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。ここでは、専門家として、これらの項目の基準値とその意味、異常値が示唆すること、そして次にどのようなステップを考えるべきかについて解説します。

赤血球数、MCV、MCH、MCHCのそれぞれの意味

まずは、それぞれの項目が何を表しているのかを理解しましょう。

各項目の基準値とその解釈

これらの項目の基準値は、検査を行う施設や測定方法によって多少異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

| 項目 | 基準値(目安) | 単位 | | :--------- | :----------------------------------------------- | :---------- | | 赤血球数 | 男性:400万~550万、女性:350万~500万 | 個/μL | | MCV | 80~100 | fL (フェムトリットル) | | MCH | 27~34 | pg (ピコグラム) | | MCHC | 32~36 | % |

これらの基準値から外れる「異常値」が検出された場合、様々な可能性が考えられます。特に、赤血球数と赤血球指数(MCV, MCH, MCHC)を組み合わせて評価することが、貧血の種類や原因を推測する上で非常に重要になります。

異常値が示す可能性

健康診断で赤血球数や赤血球指数に異常がみられた場合、以下のような可能性が考えられます。

1. 赤血球数が低い場合(貧血が疑われる状態)

赤血球数が基準値より低い場合は、貧血の状態にある可能性が示唆されます(繰り返しになりますが、貧血の診断は主にヘモグロビン濃度で行われます)。この際、MCV、MCH、MCHCの値が、貧血の原因を推測する上で重要な情報を提供します。

2. 赤血球数が高い場合(多血症が疑われる状態)

赤血球数が基準値より多い場合は、多血症が示唆されます。

3. MCV, MCH, MCHC単独の異常

赤血球数自体は正常範囲内でも、MCVやMCH、MCHCが基準値から外れることがあります。例えば、MCVが基準値からわずかに外れているものの、貧血を示すような他の項目(ヘモグロビン濃度など)は正常である場合、体質的なものや軽微な栄養状態の変化である可能性もあります。しかし、異常値が持続する場合や他の項目にも異常が見られる場合は、何らかの疾患の初期段階である可能性も否定できません。

異常値を指摘されたら次にすべきこと

健康診断で赤血球数や赤血球指数に異常を指摘された場合、まずは落ち着いて、結果の内容をよく確認することが大切です。多くの場合は精密検査や再検査が必要となります。

  1. 結果の再確認と医療機関への相談: 健康診断の結果表には、どの項目が基準値から外れているか、どの程度の異常か(軽度、中等度、要精密検査など)が記載されています。結果に「要再検査」や「要精密検査」と記載されている場合は、速やかに医療機関を受診してください。専門医(内科、特に血液内科)に相談し、詳しい検査を受けることが推奨されます。

  2. 再検査・精密検査の内容: 医療機関では、健康診断の結果を持参し、問診(自覚症状、既往歴、内服薬、生活習慣など)を受けます。必要に応じて、より詳しい血液検査(網状赤血球数、血清鉄、フェリチン、ビタミンB12、葉酸、エリスロポエチンなどの測定)、尿検査、便潜血検査、消化管内視鏡検査、胸部X線検査、腹部超音波検査、骨髄検査などが行われることがあります。これらの検査を通じて、赤血球の異常の原因を特定します。

  3. 日常生活でできること: 診断が確定するまでは、自己判断でのサプリメント摂取や食事制限などは避けるべきです。鉄欠乏性貧血が疑われる場合でも、自己判断で鉄剤を服用すると過剰摂取になるリスクや、原因不明の出血を見逃すリスクがあります。医師の指示に従い、診断に基づいた適切な治療や生活指導を受けることが最も重要です。原因が鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄分を多く含む食品(赤身の肉、魚、ほうれん草、大豆製品など)を意識して摂取することが推奨される場合もありますが、まずは医師の指導を仰いでください。

まとめ

健康診断における赤血球数やMCV、MCH、MCHCといった項目は、体の酸素運搬能力や、貧血・多血症の可能性、そしてその原因を探る上で非常に重要な指標です。異常値を指摘された場合は、その数値が何を意味するのかを正しく理解し、過度に不安になりすぎることなく、専門家である医師に相談することが大切です。医師はこれらの数値と他の検査結果、症状などを総合的に評価し、適切な診断と治療方針を提示します。健康診断の結果を健康管理に活かすためにも、異常値については放置せず、必要なステップを踏むようにしましょう。