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健康診断のNon-HDLコレステロール 基準値とその意味 専門家解説

Tags: Non-HDLコレステロール, 脂質異常症, 動脈硬化, 健康診断, 血液検査

健康診断の血液検査項目には様々な脂質関連の指標が含まれます。一般的にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が動脈硬化との関連で重要視されますが、近年ではNon-HDLコレステロールもリスク評価において注目されています。健康診断の結果でこの項目に触れ、どのような意味を持つのか、疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、専門家の立場から、Non-HDLコレステロールがどのような指標なのか、基準値、そして高値の場合に何が考えられるのか、次のステップについて詳しく解説いたします。

Non-HDLコレステロールとは何か

Non-HDLコレステロールは、血液中の総コレステロールからHDLコレステロール(善玉コレステロール)を差し引いた値です。 総コレステロール = HDLコレステロール + LDLコレステロール + VLDLコレステロール(+ IDL、カイロミクロンレムナントなど)

Non-HDLコレステロール = 総コレステロール - HDLコレステロール

このNon-HDLコレステロールは、LDLコレステロールだけでなく、VLDLコレステロールやIDL(中間密度リポタンパク質)、リポタンパク質(a)など、アテローム(粥状硬化巣)を形成する可能性のあるリポタンパク質に含まれるコレステロールの総和を示しています。つまり、HDLコレステロール以外の「悪玉」とされるリポタンパク質に含まれるコレステロール全体を評価するための指標です。

特に中性脂肪が高い場合や、LDLコレステロールが正常値でも心血管疾患のリスクが高いと考えられる場合などにおいて、Non-HDLコレステロールはLDLコレステロールだけでは捉えきれない動脈硬化リスクを評価する上で有用であると考えられています。

Non-HDLコレステロールの基準値と目標値

Non-HDLコレステロールの基準値は、一般的に概ね 150mg/dL未満 とされることが多いです。

ただし、脂質異常症の治療ガイドラインでは、Non-HDLコレステロールは、個々の患者さんの動脈硬化性疾患のリスク(例えば、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙習慣、高血圧、過去の心血管疾患の既往など)に応じて設定される管理目標値がより重要視されます。

これらの目標値はLDLコレステロールの目標値と相関しており、LDLコレステロールの目標値より概ね30mg/dL高く設定されています。健康診断の結果を受け取った際は、ご自身のNon-HDLコレステロール値が、基準値内であるかだけでなく、将来的なリスクを踏まえた目標値に対してどの程度であるかを確認することが重要です。

Non-HDLコレステロール高値が示す意味

Non-HDLコレステロールが高いということは、血液中にアテローム形成性のリポタンパク質が多く存在している可能性が高いことを意味します。これらのリポタンパク質は血管壁に侵入しやすく、動脈硬化の進行に関与すると考えられています。

特に、LDLコレステロール値がそれほど高くないにも関わらずNon-HDLコレステロールが高い場合は、中性脂肪が高いことによってVLDLなどの他のコレステロールが多く含まれている可能性や、小型LDLコレステロールが多い可能性などが考えられます。小型LDLコレステロールは通常測定されませんが、血管壁に浸潤しやすく、動脈硬化リスクが高いとされています。Non-HDLコレステロールは、このような小型LDLコレステロールが多い状態も反映しやすい指標です。

したがって、Non-HDLコレステロール高値は、心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患を発症するリスクが高い可能性を示唆しています。

Non-HDLコレステロールが高くなる原因

Non-HDLコレステロールが高くなる原因は多岐にわたります。主なものは以下の通りです。

健康診断でNon-HDLコレステロール高値を指摘されたら

Non-HDLコレステロールの高値を健康診断で指摘された場合、慌てる必要はありませんが、その意味を正しく理解し、適切に対応することが重要です。

  1. 結果の専門家による評価: 健康診断の結果を持って医療機関を受診し、医師に相談することをお勧めします。医師はNon-HDLコレステロール値だけでなく、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値、他の健康診断項目(血糖値、血圧、BMIなど)、そして喫煙習慣や家族歴といった個人の全体的なリスク因子を総合的に評価し、動脈硬化性疾患の発症リスクを判断します。
  2. 精密検査の可能性: 必要に応じて、より詳細な脂質分画検査(LDLサブクラスなど)や、動脈硬化の程度を評価するための検査(頸動脈エコー検査など)が推奨されることがあります。
  3. 生活習慣の改善指導: 医師や管理栄養士から、食生活の見直し、運動習慣の確立、禁煙、適正体重の維持といった生活習慣改善に関する具体的なアドバイスを受けることができます。これらの改善は、Non-HDLコレステロール値を下げる上で非常に効果的です。
  4. 薬物療法の検討: 生活習慣の改善だけでは目標値に達しない場合や、リスクが非常に高いと判断された場合には、医師の判断により脂質異常症治療薬(スタチンなど)による薬物療法が検討されます。

まとめ

健康診断におけるNon-HDLコレステロールは、LDLコレステロールだけでは捉えきれない動脈硬化リスクを評価するための重要な指標です。高値を指摘された場合は、放置せず、必ず医療機関を受診し、専門家による総合的な評価を受けることが大切です。ご自身の脂質状態と向き合い、適切な対策を講じることで、将来の健康リスクを低減することができます。健康診断の結果を、ご自身の健康管理を見直す良い機会として捉えましょう。