健康診断の高血圧 基準値・意味・対策 専門家解説
健康診断で血圧が高いと指摘され、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。血圧は体の状態を示す重要なサインの一つであり、健康診断で行われる基本的な検査項目です。ここでは、健康診断で血圧高値と指摘された場合に考えられること、その意味、そして次に取るべきステップについて、専門家の立場から詳しく解説します。
高血圧とは? 健康診断での基準値について
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す力のことです。心臓が収縮して血液を送り出すときの最も高い圧力を「収縮期血圧(上の血圧)」、心臓が拡張して血液を次の収縮に備えるときの最も低い圧力を「拡張期血圧(下の血圧)」と呼びます。単位はミリメートル水銀柱(mmHg)で表されます。
健康診断における血圧測定は、通常、座った状態で数分間安静にした後に行われます。この際の血圧測定値に対する一般的な基準値は、以下の通りです。
- 正常血圧: 収縮期血圧 120mmHg未満 かつ 拡張期血圧 80mmHg未満
- 正常高値血圧: 収縮期血圧 120~129mmHg かつ 拡張期血圧 80mmHg未満
- 高値血圧: 収縮期血圧 130~139mmHg または 拡張期血圧 80~89mmHg
- 高血圧: 収縮期血圧 140mmHg以上 または 拡張期血圧 90mmHg以上
健康診断で「血圧高値」や「高血圧」と判定されるのは、一般的に上記の「高値血圧」や「高血圧」に該当する場合です。なお、これは診察室で測定された血圧の基準であり、家庭で測定する家庭血圧の基準値はこれよりもやや低い基準(収縮期血圧 135mmHg未満 かつ 拡張期血圧 85mmHg未満が正常)となります。
健康診断での高血圧が示す意味
健康診断で一度血圧が高いと指摘されただけでは、直ちに病気と確定されるわけではありません。健康診断の場では、緊張や軽い運動など、様々な要因で一時的に血圧が上昇することがあります。しかし、指摘された血圧高値が持続性のものである場合、それは「高血圧症」である可能性を示唆します。
高血圧症は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いですが、長期間放置すると動脈硬化を進行させ、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病、眼底出血など、様々な重篤な疾患を引き起こすリスクを高めます。健康診断での血圧高値の指摘は、将来的なこれらのリスクを早期に発見するための重要な機会と言えます。
また、血圧高値の背景には、本態性高血圧(原因が特定できない高血圧)がほとんどですが、まれに他の病気(腎臓病、内分泌疾患など)が原因で高血圧になる「二次性高血圧」の可能性もゼロではありません。健康診断の結果は、これらの可能性を検討するための第一歩となります。
高血圧を指摘された場合の次のステップ
健康診断で血圧高値または高血圧を指摘された場合、まず最初に行うべきことは、その血圧上昇が一時的なものか、あるいは持続的なものかを確認することです。
1. 家庭での血圧測定
最も有効な確認方法の一つは、ご家庭で毎日血圧を測定することです。健康診断の場での緊張による一時的な上昇(白衣高血圧)ではないか、日々の生活の中で血圧がどのように推移しているかを把握できます。朝晩決まった時間に、安静な状態で測定し、記録をつけましょう。
2. 医療機関への相談
家庭での血圧測定でも継続的に血圧が高い場合や、健康診断で指摘された血圧値が非常に高い場合(例えば収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧100mmHg以上など)、あるいは他の検査項目(血糖、脂質、腎機能など)にも異常が認められる場合は、速やかにかかりつけ医や内科医に相談することをお勧めします。
医療機関では、改めて血圧測定を行い、高血圧の診断を確定するために必要な追加の検査(血液検査、尿検査、心電図、眼底検査など)を行うことがあります。これらの検査によって、高血圧の原因(二次性高血圧の有無)や、高血圧がすでに体に及ぼしている影響(臓器障害の有無)などを詳しく調べます。
3. 日常生活の改善
高血圧の診断を受けた場合、または診断に至らなくても高値血圧を指摘された場合は、生活習慣の見直しが非常に重要です。
- 食事: 減塩を心がけ(1日あたりの塩分摂取量を6g未満に)、野菜や果物を積極的に摂取し、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 運動: 適度な有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)を習慣的に行いましょう。
- 体重管理: 適正体重の維持を目指しましょう。
- 禁煙・節酒: 喫煙は血圧を上昇させ動脈硬化を進行させる最大の要因の一つです。飲酒量も適量に抑えましょう。
- ストレス管理・睡眠: 十分な睡眠時間を確保し、ストレスをため込まないようにリフレッシュする方法を見つけましょう。
これらの生活習慣の改善によって、血圧が安定することを目指します。場合によっては、医師の判断により降圧薬による治療が必要となることもあります。
まとめ:早期対応の重要性
健康診断での血圧高値の指摘は、自覚症状がない高血圧を早期に発見し、将来的な健康リスクを回避するための貴重な機会です。一度の測定値に過度に不安になるのではなく、まずはご家庭での血圧測定で確認し、必要であれば躊躇せずに医療機関に相談することが大切です。専門家の指導のもと、適切な対応と生活習慣の改善を行うことで、高血圧を管理し、健康寿命を延ばすことにつながります。