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健康診断の聴力検査 難聴の基準と結果の意味 専門家解説

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健康診断の聴力検査:難聴の基準と結果の意味を専門家が解説

健康診断で行われる聴力検査は、私たちの耳の聞こえの状態を確認するための重要な検査項目の一つです。自覚症状がない場合でも、聴力が低下していることがあります。この検査で異常が見つかった場合、「難聴かもしれない」「原因は何だろう」と不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、健康診断の聴力検査の目的や基準、異常値が示す可能性について、専門家の視点から詳しく解説します。

聴力検査の目的と基準

健康診断で行われる聴力検査は、多くの場合、オージオメータと呼ばれる装置を用いた気導聴力検査です。特定の周波数(通常は1,000Hzと4,000Hz)の純音を聞かせ、どのくらいの音の大きさ(音圧レベル、デシベル:dB)で聞き取れるかを確認します。これは、日常生活で特に重要とされる周波数帯域の聞こえをスクリーニングするための検査です。

多くの健康診断における聴力検査の基準は、以下のようになっています。

ただし、これらの基準値や測定周波数は、実施する健診機関によって若干異なる場合があります。ご自身の健康診断結果に記載されている基準値をご確認ください。

聴力検査で異常が見つかったら:結果が示す可能性

聴力検査で「異常」と判定された場合、何らかの難聴がある可能性が考えられます。難聴にはいくつかの種類があり、原因も様々です。健康診断の聴力検査(特に1,000Hzと4,000Hzの測定)では、特に以下のような難聴が疑われることがあります。

1. 感音難聴(かんおんなんちょう)

音を感じ取る内耳や、その信号を脳に伝える聴神経、脳の聴覚野に問題がある場合に起こる難聴です。多くの場合、高い周波数(4,000Hzなど)から聞こえが悪くなり始めます。

2. 伝音難聴(でんおんいっちょう)

音を内耳に伝える外耳や中耳に問題がある場合に起こる難聴です。鼓膜の振動が中耳の耳小骨を介して内耳にうまく伝わらない状態です。多くの場合、低い周波数(1,000Hzなど)の聞こえが悪くなります。

健康診断の聴力検査だけでこれらの原因を特定することはできませんが、どの周波数の聞こえが悪いかによって、ある程度の推測は可能です。例えば、4,000Hzだけ異常な場合は騒音性難聴の可能性、全体的に聞こえが悪い場合は加齢性難聴やその他の原因の可能性などが考えられます。

他の健康診断項目との関連性

難聴は耳だけの問題ではなく、全身の健康状態と関連していることがあります。例えば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、内耳の血流を悪化させ、難聴のリスクを高める可能性が指摘されています。また、動脈硬化が進んでいる場合も、内耳への血流障害から難聴が生じやすくなると考えられています。

したがって、聴力検査で異常があった場合は、他の健康診断項目(血糖値、血圧、脂質など)の結果も合わせて確認し、全身的な健康状態を把握することが重要です。

再検査・精密検査について

健康診断で聴力検査が「異常」と判定された場合は、通常、再検査や精密検査が推奨されます。これは、健康診断の聴力検査はあくまでスクリーニングであり、難聴のタイプや程度、原因を詳しく調べる必要があるためです。

精密検査では、耳鼻咽喉科を受診することになります。耳鼻咽喉科では、より詳しい聴力検査(オージオグラムによる詳細な聴力測定、語音明瞭度検査など)に加えて、鼓膜や中耳の状態を診察したり、必要に応じて画像検査(CTやMRI)を行ったりすることもあります。

医師はこれらの結果と問診を総合して、難聴の種類、程度、原因を診断し、適切な治療法や対処法を提案します。早期に原因を特定し、適切な対応を始めることが、聞こえの状態を維持したり、改善を図ったりするために非常に重要です。

日常生活でできること

聴力検査で異常を指摘された場合や、日頃から聞こえにくいと感じている場合は、以下の点を意識することが推奨されます。

まとめ

健康診断の聴力検査は、耳の健康状態を知るための入り口です。異常が指摘されても過度に心配する必要はありませんが、放置せずに専門医に相談し、詳しい検査を受けることが重要です。ご自身の聴力の状態を正しく理解し、必要に応じて適切な対策を講じることで、生活の質を維持し、将来の健康を守ることにつながります。