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健康診断のAST(GOT)・ALT(GPT) 基準値と高値の意味 専門家解説

Tags: 健康診断, AST, ALT, 肝機能, 肝酵素

AST(GOT)とALT(GPT)とは何か?健康診断でなぜ測るのか

健康診断の結果で「AST(GOT)」や「ALT(GPT)」という項目を目にされたことがあるかもしれません。これらは「肝酵素」と呼ばれる酵素の一種で、主に肝臓の細胞に多く存在しています。ASTは心臓や筋肉、腎臓など肝臓以外の臓器にも存在しますが、ALTは肝臓に特異的に多く存在するとされています。

これらの酵素は、細胞内でエネルギーを作り出すなどの重要な役割を担っています。通常、健康な状態ではこれらの酵素は細胞内に留まっており、血液中にはごく少量しか存在しません。しかし、肝臓の細胞が炎症や損傷を受けると、細胞内にあったASTやALTが血液中に漏れ出し、その値が上昇します。

健康診断においてASTとALTの値を測定することは、肝臓の健康状態、特に細胞の損傷や炎症の有無を早期に把握するための非常に重要な指標となります。自覚症状がない段階でも肝臓に異常が起きていることを示唆することがあり、早期発見・早期対応に繋がる可能性があります。

AST・ALTの基準値とその意味

ASTやALTの基準値は、検査を行う機関や検査方法によって多少異なりますが、一般的にASTは30 U/L以下、ALTは30 U/L以下を目安とすることが多いです。ご自身の検査結果に記載されている基準値をご確認ください。

これらの数値が基準値内にある場合、現時点では肝臓の細胞に大きな損傷や炎症が起きていない可能性が高いと考えられます。しかし、これはあくまで「現時点での状態」を示すものであり、数値が基準値内でも注意が必要なケースや、今後の健康状態を保証するものではありません。

AST・ALTが高値の場合、何が考えられるか?

ASTやALTが高値を示す場合、肝臓の細胞に何らかの障害が起きている可能性が考えられます。高値の原因として最も頻繁に見られるのは、以下の疾患です。

ASTやALTの数値がどの程度高いかによって、考えられる原因や病状の緊急度が異なります。

また、ASTとALTのどちらがより高いか、あるいは両方とも高いかといったバランスも、原因を推測する上で重要な手がかりとなります。例えば、ALTがASTよりも高い場合は脂肪肝や慢性肝炎が、ASTがALTよりも高い場合はアルコール性肝障害や肝硬変、あるいは肝臓以外の原因(心筋梗塞や筋肉の疾患など)が考えられることがあります。

他の肝機能検査項目との関連性

ASTとALTだけでなく、健康診断ではALP(アルカリホスファターゼ)やγ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)、総ビリルビン、アルブミン、LDH(乳酸脱水素酵素)など、他の肝機能に関する様々な項目も同時に測定されることが一般的です。

これらの項目の数値とAST・ALTの数値を合わせて総合的に評価することで、肝臓のどの機能に異常があるのか、原因としてどのような疾患が考えられるのかをより詳しく推測することができます。例えば、AST・ALTに加えてγ-GTPも高値であればアルコール性肝障害や脂肪肝、ALPや総ビリルビンも高値であれば胆汁の流れに問題がある可能性などが考えられます。

再検査・精密検査では何をするのか

健康診断でAST・ALTの高値を指摘された場合、多くの場合で再検査や精密検査が推奨されます。これは、一度の検査結果だけで診断を下すことは難しいため、改めて数値を測定したり、より詳しい検査を行って原因を特定したりするためです。

再検査・精密検査で一般的に行われることとしては、以下のようなものがあります。

医師はこれらの検査結果と、問診で得られた情報(飲酒習慣、食生活、既往歴、服用中の薬など)を総合して、診断を行います。

日常生活でできること

AST・ALTの高値を指摘された原因によっては、日常生活の改善が数値を正常に戻すために非常に重要となる場合があります。医師から特定の指導がない場合でも、一般的に以下のような対策が推奨されます。

ただし、これらの対策はあくまで一般的なものであり、個々の状況や原因疾患によって適切な対応は異なります。必ず医療機関で医師の診断を受け、専門家のアドバイスに従うようにしてください。自己判断での治療や根拠の乏しい健康法を行うことは避けるべきです。

まとめ

健康診断でAST(GOT)やALT(GPT)の高値を指摘された場合、それは肝臓からの重要なサインである可能性があります。多くの場合、脂肪肝や生活習慣に関連した変化が原因ですが、中には治療が必要な病気が隠れていることもあります。

不安に思われるかもしれませんが、正確な情報を得て適切な対応をとることが最も重要です。健康診断の結果を持って速やかに医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けるようにしてください。専門家である医師が、あなたの検査結果や全身の状態を詳しく評価し、必要な再検査や精密検査、そして今後の治療や生活指導について丁寧に説明してくれるはずです。早期に対応することで、肝臓の健康を守り、将来のより重篤な病気を予防することに繋がります。