健康診断のアルブミンと総蛋白 血液検査結果が示す意味合いと対策
健康診断のアルブミンと総蛋白とは?
健康診断や人間ドックの血液検査では、非常に多くの項目が調べられます。その中でも「アルブミン」と「総蛋白」は、全身の栄養状態や様々な臓器の機能を把握するための基本的な項目です。これらの項目は、肝臓や腎臓の病気、栄養障害、あるいは炎症性疾患など、多岐にわたる病態を示唆する手がかりとなります。
山本健太さんのように、ご自身の検査結果を深く理解したいと考えている方にとって、これらの値が何を意味するのかを知ることは、健康状態を正しく評価し、必要に応じて次のステップを踏む上で重要です。ここでは、アルブミンと総蛋白の役割、基準値、そして異常値が示す意味合いと対策について専門家の視点から解説します。
アルブミンと総蛋白の役割
血液中には様々な種類のタンパク質が含まれており、これらをまとめて「総蛋白」と呼びます。総蛋白の大部分を占めるのが「アルブミン」と「グロブリン」です。
- アルブミン: 主に肝臓で作られるタンパク質で、血液の浸透圧を維持する上で非常に重要な役割を果たします。浸透圧が保たれることで、血液中の水分が血管の外に漏れ出すのを防ぎ、全身に水分や栄養分、ホルモン、薬などを運搬する働きも担っています。体内のタンパク質の貯蔵庫としての機能もあります。
- グロブリン: 免疫に関わる抗体など、多様な種類のタンパク質を含みます。感染防御などに重要な役割を果たします。
- 総蛋白: アルブミンとグロブリンなどを合計した血液中の全タンパク質量を示します。
これらのタンパク質は、私たちの体の維持に不可欠な要素です。
アルブミンと総蛋白の基準値
一般的な健康診断におけるアルブミンと総蛋白の基準値は以下の通りです。ただし、これはあくまで目安であり、検査機関や測定方法によって多少の変動があることをご理解ください。
- アルブミン: 4.0 ~ 5.2 g/dL 程度
- 総蛋白: 6.5 ~ 8.0 g/dL 程度
ご自身の検査結果がこれらの基準値から外れている場合、次に示すような様々な可能性が考えられます。
アルブミン・総蛋白の異常値が示す意味合い
アルブミンや総蛋白の値は、単独で診断が確定するものではありませんが、体の状態を知る重要な指標となります。
アルブミン低値(基準値より低い場合)
アルブミンが基準値より低い場合、主に以下のような原因が考えられます。
- 肝臓での合成能力の低下: アルブミンは肝臓で合成されるため、慢性肝炎や肝硬変など、肝臓の機能が低下している場合に合成量が減少し、低値を示すことがあります。健康診断のAST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能を示す項目と合わせて評価することが重要です。
- 腎臓からの排泄量の増加: ネフローゼ症候群など、腎臓の機能障害によって尿中に大量のアルブミンが漏れ出てしまう(蛋白尿)と、血液中のアルブミンが低下します。健康診断の尿蛋白やクレアチニン、eGFRといった腎機能を示す項目と合わせて評価します。
- 栄養状態の悪化: 食事からのタンパク質摂取量が不足している場合や、消化吸収能力が低下している場合など、低栄養状態にあるとアルブミンの合成が低下します。
- 慢性の炎症や疾患: がん、重症感染症、自己免疫疾患などの慢性の炎症性疾患がある場合、体内でタンブパク質の分解が進んだり、アルブミンが血管の外に漏れ出しやすくなったりすることで低値を示すことがあります。
- 出血や火傷: 大量の出血や広範囲の火傷によって、タンパク質が体外に失われることでアルブミンが低下することがあります。
アルブミン高値(基準値より高い場合)
アルブミンが高値を示すことは比較的稀ですが、脱水などにより血液中の水分量が減少した場合に見られることがあります。
総蛋白低値(基準値より低い場合)
総蛋白が基準値より低い場合は、主にアルブミンの低下が原因であることが多いです。アルブミン低値で挙げたような、肝機能障害、腎機能障害(蛋白尿)、栄養障害などが考えられます。
総蛋白高値(基準値より高い場合)
総蛋白が高値を示す場合、アルブミンまたはグロブリン、あるいはその両方が増加している可能性があります。
- グロブリンの増加: 慢性の炎症、感染症、自己免疫疾患などがある場合、免疫反応に関連するグロブリンが増加し、総蛋白が高値となることがあります。
- 脱水: アルブミン高値の場合と同様に、脱水によって血液が濃縮されることで相対的に総蛋白が高く測定されることがあります。
- モノクローナルガンマグロブリン血症: 特定の種類のグロブリン(M蛋白)が異常に増加する病態で、多発性骨髄腫などの血液疾患の可能性が考えられます。
総蛋白が高い場合は、アルブミンとグロブリンの比率(A/G比)や、グロブリンの種類を詳しく調べる(電気泳動検査など)ことで、原因を特定する手がかりとします。
異常値が出た場合の対策と次のステップ
健康診断でアルブミンや総蛋白に異常値が見られたとしても、それだけで病気が確定するわけではありません。多くの場合、他の検査項目と合わせて総合的に評価し、必要に応じてさらに詳しい検査が推奨されます。
医療機関受診の目安と再検査・精密検査
基準値からのずれが大きい場合や、他の検査項目にも異常が見られる場合は、医療機関への受診が推奨されます。かかりつけ医や、健康診断を受けた医療機関に相談するのが良いでしょう。
医療機関では、以下のようなステップで原因を探ります。
- 問診と診察: 現在の症状、病歴、生活習慣などを詳しく確認します。
- 再検査: 同じ検査項目を改めて測定し、一時的な変動でないかを確認します。
- 追加の血液検査: 肝機能(AST, ALT, γ-GTP, ビリルビンなど)、腎機能(クレアチニン, eGFR, BUN)、炎症反応(CRP)、免疫関連の項目(電気泳動、免疫グロブリン定量)、栄養関連の項目などを詳しく調べます。
- 画像検査: 腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などで、肝臓や腎臓、その他の臓器の状態を評価することがあります。
- 尿検査: 尿蛋白の程度や、尿中に異常な成分が出ていないかなどを詳しく調べます。
- その他: 必要に応じて、骨髄検査など、さらに専門的な検査が行われることもあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、異常値の原因となっている病態を特定し、適切な治療方針が立てられます。
日常生活でできること
アルブミンや総蛋白の異常値は、 underlying(根本的な)病気が原因であることが多いため、まずはその原因を特定し、治療することが最も重要です。
ただし、低栄養が原因でアルブミンが低下している場合などは、バランスの取れた食事を心がけ、必要なタンパク質を十分に摂取することが改善につながる可能性があります。極端なダイエットや偏食は避けるべきです。
また、脱水によって相対的に値が高くなっている場合は、適切な水分補給が重要です。
いずれにしても、自己判断で特別な食事療法やサプリメント摂取を行う前に、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。
まとめ
健康診断でアルブミンや総蛋白の異常値を指摘された場合、様々な原因が考えられます。これらの項目は、全身状態、特に肝臓や腎臓の機能、栄養状態、炎症の有無などを評価する上で重要な指標です。
異常値が見られた際は、過度に不安になるのではなく、他の検査項目と合わせて結果を冷静に受け止め、必要に応じて医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。専門家と連携しながら、ご自身の健康状態を正しく理解し、適切な対応をとるようにしてください。