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HbA1c 基準値とその意味 健康診断で高値の場合の専門家解説

Tags: HbA1c, 血糖値, 糖尿病, 健康診断, 基準値, 再検査

健康診断でHbA1cを指摘されたら? 専門家による詳細解説

健康診断の結果で「HbA1c」という項目に基準値からの外れが指摘され、不安を感じている方は少なくないでしょう。HbA1cは、糖尿病の診断や血糖コントロールの状態を把握するために非常に重要な指標です。ここでは、健康診断の専門家として、HbA1cの基準値とその意味、そして高値だった場合に考えられることについて詳しく解説します。

HbA1cとは何か? 血糖コントロールの重要な指標

HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)とは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質と、血液中のブドウ糖が結合したものの割合を示す数値です。ブドウ糖は血液中に常に存在しており、その濃度(血糖値)が高いほど、ヘモグロビンと結合するブドウ糖の量も増えます。

赤血球の寿命は約120日であるため、HbA1cの値は、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖状態を反映します。日々の血糖変動に影響されやすい「空腹時血糖値」や「食後血糖値」とは異なり、より長期的な血糖コントロールの状態を知ることができる指標として、健康診断や糖尿病の診療において広く用いられています。

HbA1cの基準値とその意味

HbA1cの基準値は、検査方法によってわずかに異なることがありますが、一般的には4.5%〜6.0%未満程度が基準範囲とされることが多いです(日本糖尿病学会の定める新しい国際標準値に準拠した基準)。

HbA1cが高値だった場合に考えられること

健康診断でHbA1cの高値を指摘された場合、最も可能性が高いのは糖尿病、または糖尿病予備群であるということです。特に数値が高いほど、糖尿病である可能性や、糖尿病が進行している可能性が高まります。

HbA1cの高値は、単に血糖が高いというだけでなく、体の中でブドウ糖を細胞に取り込む働き(インスリンの働き)が弱まっていることを示唆しています。この状態が続くと、全身の血管や神経にダメージが蓄積し、将来的に糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害といった糖尿病特有の合併症や、動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めることが分かっています。

また、稀ではありますが、特定の薬剤の影響や、ヘモグロビンに異常がある病気(ヘモグロビン異常症)などがHbA1cの値を変動させる要因となる可能性も考えられます。

高値を指摘された場合の次のステップ

HbA1cが高値を指摘された場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けることが非常に重要です。健康診断はあくまで体の状態をスクリーニングするためのものであり、診断を確定するものではありません。

医療機関では、通常以下のようなステップで評価が進められます。

  1. 問診と診察: これまでの病歴、家族歴、自覚症状(自覚症状がないことの方が多いですが)、生活習慣などについて詳しく聞かれます。
  2. 追加の血液検査: HbA1cの再測定に加え、診断に必要な他の項目(空腹時血糖値、C-ペプチド、インスリン値など)が測定されることがあります。
  3. 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT): 診断に迷う場合や、より詳細な血糖変動を評価するために行われることがあります。一定量のブドウ糖液を飲み、時間の経過と共に血糖値やインスリン値の変化を測定する検査です。
  4. その他の検査: 合併症の有無を調べるために、尿検査(尿糖、尿蛋白)、眼底検査、神経学的検査などが行われることもあります。

これらの結果を踏まえ、医師が総合的に判断し、糖尿病であるか、または糖尿病予備群であるかを診断します。診断された場合は、病状や個々の状態に応じた治療計画(食事療法、運動療法、薬物療法など)が立てられます。

日常生活でできること

HbA1cの高値を指摘された場合、あるいは糖尿病予備群と診断された場合は、速やかに生活習慣を見直すことが大切です。

これらの生活習慣の改善は、HbA1cを下げるだけでなく、将来的な心血管疾患のリスクを低減するためにも非常に有効です。ただし、自己判断で無理な食事制限や運動を行うのは危険な場合もあります。必ず医師や管理栄養士などの専門家と相談しながら、自身に合った方法で取り組むようにしましょう。

まとめ

HbA1cは、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖状態を示す信頼性の高い指標です。健康診断でHbA1cの高値を指摘された場合は、糖尿病や糖尿病予備群の可能性を示唆しており、将来の合併症リスクを高めるサインであると受け止めることが重要です。

高値を指摘された場合は、放置せずに速やかに医療機関を受診し、詳しい検査と専門医の診断を受けてください。そして、医師や管理栄養士の指導のもと、適切な生活習慣の改善に取り組むことが、健康な未来を守るための最善の策となります。