専門家が答える健康診断Q&A

健康診断の眼圧検査 基準値と高値の意味 精密検査の専門家解説

Tags: 眼圧検査, 眼圧高値, 緑内障, 精密検査, 健康診断

健康診断の眼圧検査とは

健康診断で眼圧検査を受ける目的は、主に目の奥にある視神経の状態に影響を与える可能性のある「眼圧」を測定することです。眼圧とは、眼球内部を満たす房水(ぼうすい)という液体によって保たれている圧力のことです。この圧力が高すぎると、視神経が圧迫され損傷するリスクが高まります。特に、日本人では失明原因の上位を占める緑内障の早期発見に繋がる検査の一つとして位置づけられています。

眼圧の基準値とその変動要因

眼圧の基準値は、通常、10~21mmHg(ミリメートル水銀柱)とされています。この数値は、房水が眼内で生成される量と、眼外へ排出される量のバランスによって決まります。健康な目では、この生成と排出のバランスが保たれており、眼圧は基準値内に安定しています。

ただし、眼圧は測定する時間帯や体の状態によって多少変動することが知られています。一般的に、眼圧は朝にやや高く、夕方にかけて低くなる日内変動があります。また、測定時の体位(仰向けなど)、瞬き、あるいは測定器の種類によっても数値に影響が出ることがあります。健康診断で用いられるのは、空気を目に吹き付けて測定する「非接触型眼圧計」が主流であり、短時間で測定できるという利点があります。

健康診断で眼圧高値が指摘されたら

健康診断の結果で眼圧が基準値(一般的に22mmHg以上)より高いと指摘された場合、それは精密検査や眼科受診を勧められる重要なサインです。眼圧高値が示唆する最も重要な病態は、緑内障または高眼圧症です。

健康診断での眼圧高値は、これらの病気である可能性、あるいは将来そうなるリスクが高いことを示唆しているため、放置せずに専門医の診察を受けることが極めて重要です。

精密検査で何が行われるのか

健康診断で眼圧高値が指摘され、精密検査や眼科受診を勧められた場合、眼科専門医による詳しい検査が行われます。これは、単に眼圧を再測定するだけでなく、視神経や視野の状態を詳細に評価し、緑内障や高眼圧症の診断を確定するためです。主な精密検査の内容は以下の通りです。

  1. 精密眼圧測定: 眼科では、健康診断で用いられる非接触型とは異なる、より正確とされるアプラネーション眼圧計(角膜に直接触れて測定)などを用いて眼圧を再測定します。また、時間帯による変動を確認するために、複数回測定を行うこともあります。
  2. 眼底検査: 眼底カメラや倒像鏡(医師が目に直接光を当てて観察する器具)を用いて、目の奥にある視神経や網膜の状態を詳しく調べます。特に視神経の形や色、陥凹(へこみ)の大きさなどを観察し、視神経障害の有無や進行度を評価します。
  3. 視野検査: 見える範囲(視野)に異常がないか調べる検査です。一点を見つめた状態で、周辺に表示される光が見えたら合図をするという方法が一般的です。緑内障によって視野が狭まっているかどうかを確認します。
  4. 光干渉断層計(OCT)検査: 近赤外線を利用して、視神経線維層や網膜の断層画像を撮影する検査です。非常に精密な視神経や網膜の厚みを測定することができ、緑内障の早期発見や進行評価に有用です。
  5. 隅角検査: 房水の排出口である隅角(ぐうかく)の状態を観察する検査です。房水の流れが悪くなる原因を調べます。

これらの精密検査の結果を総合的に判断し、緑内障、高眼圧症、あるいはその他の眼疾患の診断が確定されます。眼圧が高くても、精密検査で視神経や視野に異常がなければ、高眼圧症として経過観察となる場合が多いです。

診断後の対応と日常生活

精密検査の結果、緑内障と診断された場合は、病気の進行を抑えるための治療(主に点眼薬による眼圧下降治療)が開始されます。高眼圧症と診断された場合や、眼圧が高くない正常眼圧緑内障の疑いがある場合でも、定期的な経過観察が必要となります。これらの対応は、患者様の状態や検査結果に基づいて眼科医が判断します。

日常生活においては、急激な眼圧の上昇を招くような行動は避ける方が望ましいと考えられています。例えば、過度なストレスや疲労、長時間のうつ伏せになる姿勢などが眼圧に影響を与える可能性が指摘されています。しかし、日常生活での一般的な範囲であれば、それほど神経質になる必要はありません。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、健康的な生活習慣を維持することが、全身の健康維持に繋がり、結果として目の健康にも良い影響を与えると考えられます。自己判断で治療や経過観察を中断せず、必ず専門医の指示に従うことが最も重要です。

まとめ

健康診断で眼圧高値を指摘されたことは、緑内障などの重要な眼疾患の早期発見に繋がる貴重な機会です。この結果は、必ず精密検査を受け、眼科専門医による正確な診断と適切なアドバイスを得ることの重要性を示しています。眼圧高値は、必ずしも緑内障であるということではありませんが、将来のリスクを含めて専門的な評価を受けることが、将来の視力や視野を守るために不可欠です。健康診断の結果を真摯に受け止め、次のステップとして眼科を受診されることを強くお勧めします。