健康診断 骨密度検査 基準値と意味 専門家解説
健康診断における骨密度検査とは
骨密度検査は、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度含まれているかを測定する検査です。骨の強さを示す重要な指標の一つであり、骨粗鬆症の診断や将来的な骨折のリスクを評価するために行われます。一般的な健康診断の必須項目ではありませんが、オプション検査として選択できる場合や、自治体などが実施する特定の検診で受ける機会があります。
骨密度検査の方法と種類
骨密度を測定する方法にはいくつか種類があります。代表的なものとして、以下の方法があります。
- DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)法: 現在、最も広く普及しており、精度が高いとされる方法です。体の特定の部位(主に腰椎や大腿骨近位部)に2種類の異なるエネルギーのX線を照射し、骨と軟部組織の吸収率の差から骨密度を測定します。測定時間が短く、被ばく量も少ないという利点があります。
- MD(マイクロデンスメトリー)法: 手のX線画像を利用して骨密度を測定する方法です。手軽に行えるという利点がありますが、DXA法に比べると精度はやや劣るとされます。
- QUS(超音波法)法: かかとやすねなどの骨に超音波を当てて骨密度を測定する方法です。X線を使用しないため被ばくがなく、妊娠中の方でも安心して受けられます。しかし、測定部位が限られるため、主にスクリーニング検査として用いられます。
健康診断や人間ドックで一般的に行われるのは、これらの方法のいずれかです。どの方法で測定されたかによって、結果の見方や基準値が異なる場合があります。
骨密度検査の基準値と結果の見方
骨密度検査の結果は、「YAM値(Young Adult Mean)」と呼ばれる、最も骨密度が高いとされる若い成人(20〜44歳)の平均値と比較した割合(%)で示されることが一般的です。
- YAM値 80%以上: 正常範囲と考えられます。
- YAM値 70%以上 80%未満: 骨減少症と診断される場合があります。骨密度が平均より低下していますが、骨粗鬆症と診断されるほどではありません。しかし、将来的に骨粗鬆症へ進行するリスクがある状態です。
- YAM値 70%未満: 骨粗鬆症と診断される場合があります。骨密度が著しく低下しており、骨折しやすい状態です。
ただし、これらの基準値は一般的な目安であり、最終的な診断は医師が他の要因(年齢、性別、既往歴、既存骨折の有無など)を総合的に考慮して行います。検査方法によっても基準値の定義が異なる場合がありますので、検査結果の用紙に記載されている基準値をよく確認し、不明な点は医師に質問することが重要です。
骨密度が低い場合に考えられること
骨密度が基準値よりも低い場合、以下の状態が考えられます。
- 骨減少症: 骨量が減少し始めている状態です。まだ骨折のリスクはそれほど高くありませんが、放置すると骨粗鬆症へ進行する可能性があります。
- 骨粗鬆症: 骨の量が減り、骨の質も劣化することで、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。特に、閉経後の女性に多く見られますが、男性でも加齢や生活習慣病、特定の病気や薬の影響で発症することがあります。
骨密度の低下は自覚症状がほとんどないため、健康診断で指摘されて初めて気づくというケースが多くあります。
骨密度が低くなる原因とリスク要因
骨密度が低くなる原因は様々ですが、主なリスク要因として以下のものが挙げられます。
- 加齢: 骨量は20〜30歳頃にピークを迎え、その後は徐々に減少していきます。特に女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、骨密度の低下が進みやすくなります。
- 性別: 女性は男性に比べて骨量が少なく、閉経による影響も大きいため、骨粗鬆症になりやすい傾向があります。
- 生活習慣:
- カルシウムやビタミンDの摂取不足
- 運動不足
- 喫煙
- 過度なアルコール摂取
- 日光浴不足(ビタミンD生成不足)
- 疾患や薬の影響:
- 甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患
- 関節リウマチなどの炎症性疾患
- 糖尿病、慢性腎臓病
- ステロイド薬の長期使用
- 一部の胃薬や抗てんかん薬など
これらのリスク要因に複数当てはまる場合、骨密度が低下している可能性が高まります。
骨密度が低いと指摘された場合の次のステップ
骨密度検査で骨密度が低い、あるいは骨減少症や骨粗鬆症の疑いがあると指摘された場合は、必ず医療機関を受診し、より詳しい検査や医師の診察を受けることをお勧めします。
医療機関での精密検査
受診した医療機関では、通常、以下のような精密検査や評価が行われます。
- 詳細な問診: 現在の症状、既往歴、家族歴、生活習慣(食事、運動、喫煙、飲酒など)、内服薬などを詳しく確認します。
- DXA法による骨密度測定: かかとなどで簡易的に測定した場合、より診断精度の高いDXA法を用いて腰椎や大腿骨近位部を測定することがあります。
- X線検査: 背骨(脊椎)や腰骨(腰椎)などのX線写真を撮影し、既存の骨折(いつの間にか骨折など)がないか、骨の変形がないかなどを確認します。
- 血液・尿検査: カルシウムやリンの代謝、骨代謝マーカー、ビタミンD濃度、甲状腺機能などを調べ、骨密度低下の原因となる病気がないかを確認します。
これらの検査結果と問診などを総合的に判断し、骨粗鬆症の診断が確定した場合や、骨折リスクが高いと判断された場合には、治療が開始されます。
日常生活でできる対策
骨密度を維持・向上させるためには、日常生活での取り組みも重要です。
- 食事:
- カルシウムを多く含む食品(牛乳、乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を積極的に摂取します。
- カルシウムの吸収を助けるビタミンD(きのこ類、魚介類など)や、骨の健康に関わるビタミンK(納豆、緑黄色野菜など)もバランス良く摂ることが大切です。
- 運動:
- 骨に適切な負荷がかかる運動が効果的です。ウォーキング、ジョギング、軽い筋力トレーニングなどが推奨されます。屋外での適度な運動は、日光浴によるビタミンD生成も促進します。
- 転倒予防のためのバランス能力を高める運動も重要です。
- 生活習慣の改善:
- 禁煙を心がけましょう。喫煙は骨密度低下のリスクを高めます。
- 過度なアルコール摂取は控えます。
- 日光浴を適度に行い、体内でビタミンDを生成します(紫外線の影響も考慮し、適切な時間や対策が必要です)。
これらの対策は、骨密度が正常範囲内であっても、将来の骨密度低下予防のために有効です。
まとめ
健康診断で行われる骨密度検査は、骨の健康状態を知り、骨粗鬆症や骨折のリスクを早期に発見するための重要な手がかりとなります。基準値からの逸脱があった場合は、単に数値を見るだけでなく、その意味するところを理解し、専門医による精密検査や適切な対策に繋げることが大切です。
検査結果について不明な点や不安な点があれば、必ず医師に相談してください。骨の健康は全身の健康にも繋がりますので、日頃からバランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、骨密度の維持に努めましょう。